2011年 夏の北極海氷分布予報


2011年6月24日


西村陽・岡遼馬・齊藤宏大・弟子丸英樹

木村詞明・山口一

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今年の夏は例年に比べて北極海の東半球(シベリア)側で海氷域が後退

しやすく、逆に西半球(カナダ)側での海氷融解は遅れるでしょう



昨年12月から今年の4月末までの海氷の動きを見ると、北極海の西半球(アラスカ, カナダ側)で海氷が収束、東半球(シベリア側)で発散しています。特に、ニューシベリア諸島北部での発散が大きくなっています。このため、アラスカ沖や多島海側では例年に比べて海氷が厚く、海氷の融解が遅れることが予想されます。一方でシベリヤ側、特にラプテフ海とその北部では海氷が薄く、海氷域の後退が早く進行するでしょう。ただし、Severnaya Zemlya諸島西部では例年よりも遅くまで海氷が残る可能性があります。 ※7月13日 計算に間違いが見つかったため一部の図を差し替えました。



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解説



今年は工学部4年生の西村, 岡, 齊藤, 弟子丸が領域プロジェクトとしてこの予測に取り組みました。


近年、夏季北極海の海氷面積が急速に減少してきています。また、長期的な減少だけでなく、北極海の夏の海氷分布は年によって大きく異なります。


図4:今夏の海氷分布と利用可能航路(模式図)

図3:今年の9月10日の海氷密接度推定値の平年値からの偏差(%)

(図1の値から図2の値を引いたもの。青字が平年より海氷が少ないと予想される場所)

図2:過去8年間の9月10日の平均海氷密接度(%)

図1:今年の9月10日の海氷密接度予測値(%)

図5:海氷面積最小期(9月10日)の海氷密接度の平年値からの偏差(%)

左上から2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010年

各年の密接度から8年間の平均値を引いたもの



図5は2003年から8年間の各年9月10日の海氷密接度偏差(8年平均値との差)を示したものです。海氷域の広がりが年によって異なること、2007年以降、海氷面積が小さい状態が続いていることが分かります。


過去の研究から、冬から春にかけての海氷の動きと夏季の海氷分布との間に密接な関係があることが分かってきました。この期間に海氷が密集する場所では海氷が厚くなり夏に融けにくく、逆に発散する場所では薄い海氷が多くなり夏に融けやすくなります。今回の解析もその知見を基に行いました。


まず、各年の12月1日の海氷域上に計算のための粒子を等間隔で配置します。粒子の数は約10000個です。次に、人工衛星搭載のマイクロ波放射計AMSR-Eによる観測画像から独自に計算した毎日の海氷の動きのデータを使って、この粒子を動かします。そして、4月末までの粒子の動きの特徴を解析します。


この方法は

1. 12月1日の時点ですでに存在する氷は厚い氷である

  1. 2.その厚い氷が発散して少なくなると、そこは薄い氷で覆われる

  2. 3.厚い氷は融けにくく、薄い氷は融けやすい

という考えのもとで行なっています。


この手法を用いた昨年の予測では、カナダ沖で海氷の後退が早くシベリア沖での遅くなるという結論に至り、実際にそれが現実のものとなりました。

図6:12月1日に等間隔に配置した粒子の4月末時点での分布

左上から2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010年



予測手法1


過去8年間に渡って集積された冬〜春の海氷の動きと夏の海氷の密接度のデータを用いて、9月時点の個々の海域での海氷の密接度と、4月末の時点の点の密度との関係を解析します。それぞれの海域で、過去の8年間の両者の関係式を求め、それを基に今年の4月末までの海氷の動きから夏の海氷密接度の予測値を出しました。結果は上記の図1, 2, 3に示す通りです。また、下記図7は、8年分のデータをもとにした4月末の点の数と9月の海氷密接度との相関係数で、相関係数の高い場所ほど両者の関係が強い場所を示します。年による海氷密接度の差が大きい海域では相関係数が高くなっていることが分かります。

図8:12月1日から4月末までの海氷の動き

上から2008, 2009, 2010, 2011年

図7:4月末時点での点の数(12月以前から存在する厚い氷の面積)と

9月の海氷面積との相関係数



予測手法2


海氷の移動量データをマッピングし、海氷の移動量に注目して解析を行いました(図8)。その結果、今年はこれまでの8年に比べて、ラプテフ海からの海氷流出が多く、またアラスカ沖での海氷の動きが弱いことが分かりました。これらのことから、手法1による予測結果とほぼ同じ海氷分布が予測されました(図4)。